ヤギ家族寮
大阪に本社のある繊維関係商社の社宅である。創立100年を期し関東地区の営業をさらに充実させるため、社員の基地である古い社宅を改築することになった。地域に調和した建築をつくりたいという建築主の希望により、階数は4階、容積率も(最大200%)170%と余裕を残した計画である。
浦和市の閑静な住宅地で、敷地から1q以内にJR北浦和駅、市役所、警察署、消防署や県立美術館、県庁などがある。商店が点在する国道17号から200mほど入ったところで専用住宅がほとんどであるが社宅も数棟ある。この地域はほぼ南北のグリッド状に道路が配置されていて、敷地は南と東が8m、西が6mの道路に囲まれた平坦な土地である。
住戸部分についての最大の特徴は、全戸メゾネット型を採用していることである。@住戸内のプライバシーの確保、A住空間としての豊かさ、Bアイデンティティのある社宅、という条件を満たす計画としてのメゾネットの提案である。3L+DKであるが、面積も一般的な共同住居より広めの25坪(84u)以上ある。室内構成のタイプの違いはファミリースペースが、グランドゾーン階では下階に、ルーフゾーン階では上階にある。ファミリールームとダイニングルームは、60〜80pのレベル差があり、スペースを限定することによって、空間的ポテンシャルを高めている。玄関フロアから上階までの階高は2500oと低くおさえ、メゾネットの圧迫感をなくしている。3つの寝室は、採光・換気・冷暖房とも完全に独立しており、それぞれ個別のバルコニーを持つ。
住戸以外の付属施設は、ひとつに地階多目的利用集会室がある。ここには、種々な弱電設備が備えてあり、オンラインであらゆる情報伝達が可能である。もうひとつは、3階の廊下レベルに子供広場がある。ここは東側に張り出した2階部分の屋上で、鳥かご状の防球ネットをかぶせ、床はゴムチップ舗装をほどこし、パーゴラ・遊具・ベンチをもち、子供たちのボール投げまで含め、自由に遊べるスペースである。

【コメント:建築設計資料第37号より転載】
作品16/ヤギ家族寮
鈴木啓二/建築設計社のホームページ
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