ピアノの先生の家/S邸
↑南側外観
↓ダイニングスペース
敷地は大田区内の住宅地で、南側が幅8mのバス通りに面している。夫婦と6歳と2歳の子供で構成する若い家族のための住宅である。特殊な条件として、地盤が軟弱なため道路からの振動が伝わってくること、もうひとつは所要室として2台のピアノの入るレッスン室が欲しいことである。空間構成のアウトラインは、★外からの振動や騒音は小さく抑えたい★ピアノの音をなるべく外に漏らさない★将来ピアノ教室も考えられるので、動線計画を明確にしておきたい、という要望を満たすため、個室と共用スペースのそれぞれを階分け、構造分けすることによって方向づけをしている。寝起きをする寝室と浴室は2階に配置し居住性のよい木造を当て、動的に生活するピアノ室、居間、食堂は一階にして壁式鉄筋コンクリート造としている。
平面計画では主婦が一日の大半を過ごす家事のためのスペースをDK中心として集約し、快適かつ合理的に動き回れる空間をつくろうとした。家事をしながら、子供の遊ぶ芝生の庭、2階への出入り、ピアノ室から玄関、居間を見渡せ、家全体を視覚的に把握できるようにしている。(外から覗かれないように、前庭の擁壁をアイレベルより高くしている。)裏庭の植栽に面してL型に開いた厨房の窓から覗き込むと建仁垣_に隔てられて物干場がある。このサービスヤードは勝手口のたたきにある洗濯場と接近していて、他の作業と並行して、洗濯から干す作業までが行なえる。勝手口廻りにはインターホン、電話、給湯機リモコンもセットしていて、このスペースからの動線的ロスを極力抑えている。このような平面の中心にあるダイニングテーブルは単なる食卓にとどまらず、日常の団らんの場であり、来客との語らいの場でもある。

【コメント:建築文化83-12号より転載】
作品22/ピアノの先生の家S邸
鈴木啓二/建築設計社のホームページ
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