シシド静電気東京支店

↑道路側外観

↑会議室
シシド静電気は静電気に関する製品や部品を製造するメーカーである。経営管理は丸ビルにある本社で行い、この東京支店では営業を主に行う。この建築は支店が利用する事務所と一部テナント用で、新築計画時に容積率(200%→300%)建蔽率(60%→70%)の緩和が決定していたため、新築後2年で増築をした。洗足池に近く中原街道に面した大田区東雪谷1丁目にあり、敷地形状は、間口13m奥行き22mで、地盤が前面道路から2m高い。
この計画で与えられた条件は、@用途地域が住居系のため、容積率・建蔽率が低く、事務所ビルとしてどう効率的な計画をするか。A増築工事を行う時、営業活動に支障なく施工可能で、面積確保も無駄なく行えること。B創立記念事業として個性のある建築を造ること。であった。全体の空間構成は、Aの増築をどのように作っていくか、が骨格となった。内部は、事務室、会議応接室、倉庫、駐車場の四つの機能からなる。ゾーニングの検討では、a敷地の奥か手前に空地を残し、そこに増築をする方法、b各階を広く作って上部に階を増やす方法、の二つが考えられたが、工事中の動線分離と騒音の問題、増築するまでの事務室面積規模と増築後の平面形、の点から、鉄骨構造で上部に階を増やす方法が選ばれた。各階の計画で工夫が必要であったのは、道路レベルの駐車場である。営業車が多いため、できる限りの駐車台数が必要であった。道路レベル全面に車庫を作ると建蔽率がオーバーする。といって、建蔽率内に収め、残りを屋外駐車にすると駐車台数が減ってしまう。そこで2m上がった地盤を活かし、平均地盤から天井までの高さを1m以下になるように駐車場を潜らせて、この階を地階扱いにした。この法規的な扱いによって、敷地いっぱいに外壁を立上げた駐車スペースが、建蔽率の対象外になり、屋内駐車場で最大面積を取ることが可能になった。また、駐車場の容積率緩和も利用しているため、容積率も対象外で延べ面積規模も大きくなっている。
次に建蔽率から発生する40%のオープンスペースをどう取るか。これは事務室スペースへの採光の取り方を形づけると共に、建築の見せかたを演出する。ここでは事務室の北側採光と、都心及び駅方向からのアプローチへの正面性を作るため、北側オープンスペースとした。敷地北側には住宅が南庭で開放されており、見下ろしへの配慮から、増築用の架構体を利用して敷地境界にパンチングの目隠しを設けた。これによって、自然採光に恵まれた開放的な執務空間が出来上がった。中原街道側は遮音のためガラスブロック窓とし、建築の顔としてR状のエレベーションになっていて連続的にオープンスペースへ繋がる。駐車場を有効利用するため、オープンスペースに階段を設け1層分上がった1階にエントランスを設けている。
作品11/シシド静電気東京支店
鈴木啓二/建築設計社のホームページ
作品リストへ戻る 次、作品12へ前、作品10に戻る