鈴木啓二/建築設計社のホームページ
レクチャー後記
この時期にカンボジアの学生に里山レクチャーをできてタイムリーであったと思う。いま、カンボジアでは、社会的動乱期を経て、これまでの乱伐によって森林環境問題を抱えているという。伐採規制を敷いている為、木材価格が高騰して建築用材も、ままならないというのだ。我々の知るイメージは森林大国である。若い人たちがここで述べた里山民家的考え方を参照することは、建築用材や森林回復にとっても、一助になるのではないかと考えている。
前、本編に戻る アンコール遺跡近郊の今の生活 シエムリアップ滞在は5日間でしたが、その間に見たアンコールの概要を簡単に纏めてみました。


日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)は、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金に基づく活動の一環として、アンコール遺跡の保存修復問題を討論することを目的に、毎年、「アンコール遺跡保存国際シンポジウム」を開催しています。次のコメントは、2001年度シンポを聴講して、私の提案を中川団長に送った手紙です。

Japanese Government Team for Safeguarding Angkor 団長 中川武さま
今回のシンポジウムについて私の感想をメモしてみました。今年度のテーマは"遺跡保存修復のための国際協力活動におけるスタンダードはあるか"が主要な論点であったと思います。 話は変わりますが、去年の早稲田大学の広告でバイヨンと土屋君をバックにした1000年先を見据えるという新聞全面広告がありました。大学ができてまだ125年というのに、1000年先なんて超飛躍で一体何を考えているのか、と思っていました。が、今回のシンポジウムを聞いていて、これが良いのではないかと着想しました。 それは、今後1000年間という間に、今の保存修復方法が、どう位置づけられているか、という事です。具体的にいえば、今、行っている大修復は、1000年の間に何回行う事が計画されているのか、また、使用した材料は、それぞれ何年間持ち、大修復と大修復の間の、何時、どういう時に何回補修が行われるのか、といった、タイムスケジュール(当然、技術的検討書付)があれば、とても分りやすいと思うのです。(私がアンコールの論文、報告書をあまり読んでいないので、的外れな事かもしれません。また、恐らく担当している人や国は、みなこの事を検討していて資料もそろっているのかも知れません)。こうしたものが、報告書や論文に必ず併記してあれば、我々のような保存修復の専門家でなくても理解しやすいし、また、専門家どうしも評価し易いのではないでしょうか。また、当事国にとっても安心して協力を願えるのではないか思います。 今回の中国隊の報告も素晴らしいものであると思いますし、内容的に変であるという所がある訳でもありません。しかし、建築家としての計画者的立場から見ると、タイムスケジュール的側面が伝わってこないと、保存修復行為の報告として何かしっくり来ません。発表時間と紙面の制限があってそこまで触れられないのかもしれませんが、この程度の報告にもそういう内容が記述されるようなシステムが望まれるのではないでしょうか。 こういった『タイムスケジュールを全ての保存修復の計画書、報告書に必ず、併記する』という事でも、スタンダードになるのではないかと考えるのですが如何でしょうか。 2001.11.03 文化の日に 鈴木啓二