下地作り
桁の上に架けている登り梁状の叉首丸太と棟木までが大工工事で、それから上部の下地組みも含めた全てを茅葺工が施工する。下地は全て竹材で作るのを原則とする。1間間隔の叉首に、径2〜2.5寸の真竹を1尺5寸間隔に屋中竹を渡す。その上から流れ方向に、径1寸5分〜2寸の真竹を6寸間隔に取り付ける。茅の重みで軒先が垂れないように、この民家では軒先部分に垂木竹の代りに3尺間隔で同径の杉丸太を力垂木として入れている。
垂木竹は縛りつける前にロッパ竹(1.5寸φ)を定規に垂木竹の先端を揃えて、はこ締めで締め付けながら編み絡んでいく。網状の竹を縄でからみ付ける方法は、応力が一点に集中しない優れた方法で、部分の欠損による変形を防止する。
屋根の構造は棟で二つに分離し易いが、垂木竹の棟部分を潰し割って反対側の垂木竹と縄で編み付け一体にしている(写真7)。軒先持ち出し部分の垂木竹も単材で力を受けないよう横材を補強に入れている(写真9)。軒先下場のハリキリ竹(別機能がある)と、垂木竹の上のロッパ竹に並べた化粧竹(2寸φ)である。この補強によって軒先端荷重を垂木構造全体で支える。軒先は茅を何段にもホコ竹で押え付け、縄で茅の上から上からハリキリ竹の下を廻して縫い合せて頑強な一体構造にする。最後に茅束を直接受ける野地板材としてのエツリ竹を取り付ける。エツリ竹は女竹を1寸巾に割って、背を下向きに棕櫚縄で絡みつける。
竹材の性質
竹種
産 地
性 質
真竹
(屋中・垂木竹)
本州各地。近畿地方最多。岩手県以北には殆どない 強靭で、負担力最大、細割りに適する。肉は比較的に薄い。
女竹
(エツリ竹・矛竹)
各地に産する。伊豆、安房、山城、伊予産が最良 柔軟、肉薄であるが粘力性に富む
孟宗竹
(無使用)
東京、京都、和歌山、四国、九州地方 肉厚で脆い。構造材と細割に不適。表皮硬く、磨くと光沢がでる。

1.叉首の上に先ず屋中竹を縛る

4.隅部の垂木竹の納まり:垂木竹を扇状取りつける

3.屋中竹の上に垂木竹を縛る

5.内部より屋中竹と垂木竹を見る。太い斜材は叉首(@1間)、縄が絡んでいる横材は屋中竹(@1.5尺実長)、その上に乗っている斜材が垂木竹(@6寸)、その中央に黒く見えるのが力垂木(@3尺)。

6.たるき竹を全面取り付けたところ。

9.横に通るのははロッパ竹と化粧竹。黒板下横材はハリキリ竹

7.棟:左右から延びた垂木竹を折曲げ接続する。

8.現場で女竹を割ってエツリ竹を作る。

9.垂木竹の上にエツリ竹を付け下地完成
茅葺き工事2:下地づくり
鈴木啓二/建築設計社のホームページ
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