壁塗り作業工程
@水合せ:荒壁土は粘土混じり土砂を使い、数度に分け藁すさを加え混ぜ合せる。塊が出来ないよう鍬で良く切り返し足で踏みしめる。この現場では、水合せ開始から塗り始めまで3ヶ月間を、この工程に当てた。この期間を長く取ると、良く熟成し粘度の高い、ひび割れずらい材を得る。又、建替えの場合には、使い古しの土を多く入るとひび割れずらい壁になる事が経験的に知られている(写真12:前頁)。この工程は中塗り・斑直し材は不要
A荒壁:一般的に横小舞・横間渡し竹側から荒壁を塗り込む。貫に対して、屋外側に縦間渡し・縦小舞、貫と同位置に横小舞竹を取付けているので、ここでは屋内側から塗り始めるのであるが、内側が貫表し(厚さを半分しか塗らない)部分は仕上がりを寸法通りに納める為に外部から塗り始めた(写真13)。両面を厚く塗る場合には、荒壁は小舞竹の部分だけ塗って、貫は露出したままにする。内側貫表し部は小舞の屋外側に貫が飛出していないため、貫の部分も一回で塗り回す。標準工法と接着状態が変わる為、貫部分に長い藁簾を塗込み補強をした(写真14)。格子目の間を通って、屋外側まではみ出す力で塗り込む(写真16)。こぶ状にはみ出た荒壁を同日中にコテで均し裏ナデ(写真17)をし、土が小舞と一体となるように押さえる。
B裏返し:(写真18)荒壁の乾燥を待って、裏返しに掛かる。荒壁を屋内側から塗ったので、裏返しは、屋外側から塗る。縦小舞が隠れる厚さで荒壁土をぬる。裏返しは貫の上も同時に塗り込む。
C貫伏せと中埋め:裏返し後、乾燥を待ち(2〜4週間後)、屋内側の貫の部分に土を付け、貫で切れている荒壁を連続させる(写真19)。貫の部分だけを蒲鉾状に土を盛り上げ、上の壁から下の壁まで十分に渡る長さの藁を縦方向に貼って補強をいている。貫伏せ後、貫伏せと貫伏せの間に出来た窪みを壁土で埋め、中埋めをする(写真20)。
D墨打ちとヒゲコ打ち:柱、梁、貫など、壁の散り際に仕上げの位置を朱墨にて出し、仕上げの壁と、柱等の間に隙間が生じ難いようにヒゲコを打つ(写真21)。ヒゲコはステンレス釘に6cm程の麻苧を結びつけたもので、6cm間隔に打ち付ける。

L荒壁塗り:貫表し部の屋外側

M貫部分の荒壁に長い藁簾を塗込む
Eチリ廻り:荒壁・裏返し乾燥後、ヒゲコの押さえにヒゲコの巾でヒゲコを塗り込む(写真22)。塗る壁材は屋内側は、壁土、屋外側は漆喰を用いた。隣合うヒゲコをハの字に重ねて塗りこんだ。
F斑直し:散り廻り漆喰が十分乾燥したら、中塗り土で大斑をとり、次に小斑をとる。この工程終了で、ほぼ平坦に仕上げられる。
G中塗り仕上げ:下地の乾燥後、中塗り土を薄手の鏝で力強く塗り付ける。

N上塗を強く接着させる為の処理

O荒壁裏面:はみ出した壁土

P裏なでした表面(Oをコテで均す)

Q裏返し:貫表し部

R貫伏:貫部分を藁簾と土で塗込む

S中埋め:R貫伏せの間を埋める

21ヒゲコを梁、柱に取付け
22チリ伏:ヒゲコをハの字に塗込む

23斑直し

24中塗り:右側2面が完成

25中塗り仕上げが乾燥してきたところ
左官工事2:土壁下地・中塗仕上
鈴木啓二/建築設計社のホームページ
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